子守唄がとぎれる
心が振るえている
肉体が崩れていく
闇の形に拳をつくり
名前のないぬくもりを
抱きしめる
繰り返し 繰り返し
季節に追い立てられ
突き上げられ
待つということの恐怖に
振り返りながら
過去形のまま
突然
奔り始める
そんな時
人はさすらう
肩に降り掛かる
死者の群れを
振り払いながら
病んだ風景の中を
さすらい始める
海に溶けていく
母が
幸福をふりかえる
母が母であるための
欲望が
病んでいく
冷えたぬくもりを抱きしめ
母は
少女になる
時が流れてくる
冷えた夜の隙間から
消えた日常を抱えて
さ よ う な ら
風がふいていた
すぐ近くで そして遠くで
季節の匂いがする
生きるために必要な幻想と
死ぬために必要な幻想とに
化粧された私が
呼吸の音に
ふりむく
さ よ う な ら
死人が
微かな寝息をたてる
汗に濡れた肌を
舐める乾いた唇
読経の声が止む
窓を閉めてくれないか