ひっそりと
あなたを愛することができるだろうか
ひとつの影が
鏡の奥から愛を凝視する
追いかけても追いかけても
追いつけなかった私の影
死ぬためにはひとつの微笑が必要だ
遠さという距離は誰にも測れない
空に吊り下がった死
羽搏く鳥の影
速度が欲しかった
私が私に近づくために
速度が欲しかった
住所 氏名 年齢 性別 血液型 職業
何という孤独
言葉なんか覚えるんじゃなかった
夢が私を呼ぶ
幾千の夢が
砂浜に打ち上げられた深海魚のように
醜く群衆の眼に曝され
乾燥していく
もう帰る所はなく
腐り始めた明日が
指先に絡み付く
互いに愛しあっているという不安
不在だったのは
あなたか 私か




2013.09.02 Mon l 詩・笑い仏 l コメント (4) トラックバック (0) l top
茶番だ
滑稽だ
狂っていく愛なんて
柔らかく変形していく夢を
素足で歩く
無数の言葉たちが私に背を向けて
朝日のなかを駆け抜けていく
書かれた言葉は既に思い出だ
言葉がこんなにも遠いものだと
どうして今まで気がつかなかったのだろう
言葉が私を裏切るよりも早く
私は嫉妬を記憶する
雨に濡れてあなたは眠る
舌が動く
私は時計の音になる
夜の
私の

裸の
あなたの

思い出に満ちていく切ない呼吸
絡み合った指の熱
叫びが凍る
賽の河原に
月が舞い降りる
滑稽だ 滑稽だ
不意の恐怖に足を掬われ
割れてしまった鏡にもう私はいない
なぜと問うしかない不安に
混ざりあった血が死んでいく
空は鏡のように
飢えている
果てしなくハッピーな
風景の道化芝居
あなたの胎内に蛇が住む


2013.09.01 Sun l 詩・笑い仏 l コメント (0) トラックバック (0) l top
空の裂け目から死人の首が投げ出され
いたるところで眼が燃える
降りしきる雪の上に飛ぶ一羽の鳥を
掴み殺す私を
嗤え
会話のきれた受話器をいつまでも
握りしめた私を
嗤え
人生は陽気だ
子守唄はもう聞こえない
背中を見るために振り返るのは滑稽だ
幽霊が笑う
追い越せない私の死
私は私を食べ続ける
あかるすぎる
あらゆる目眩
あかるすぎる
死んでしまった風景
明日への殺意
愛撫を拒否して堕ちる愛のため
憎むことのできる清さをもちたい
私の指先の吹き溜まりに
また言葉がひとつ溜まる
重くなった指先で爪が割れる
視線だけが残った火葬場で愛を殺す
髪が燃える
蛇が喉の奥から舌を出す
朝露を溜めて輝く
蜘蛛の巣の糸のように
怪しげな発狂
あなたは私の死だった
愛を愛と言ってしまうのはよそう
あなたを呼ぶ私の声が
今でも聞こえる


2013.08.31 Sat l 詩・笑い仏 l コメント (0) トラックバック (0) l top
みちのくの安達が原の黒塚に
鬼こもれりと聞くはまことか<平兼盛>


狂っていく空
雪が降る
私は叫び
私は死ぬ
鏡の中の敵意を信じることだけで
生きてきた私は
私を好きになりかけていた
冗談だ
許すことなどできない
人生など
愛など
言葉など語れない
惨酷だ
透き徹っていくことの痛みに
愛してます
と書き始めなければならなかった
私のなかの距離
過ぎ去った花の季節よりもやさしく
軽々と掌に乗る愛
抱きあう雲たち
生きていても
死んでいても
朝はいつでも青い
ひそかに
飛び去った鳥の
羽搏きが聞こえ
人影が擦れ違う
呟くことで
私は私に耐えてきた
生きることは月並みであることを
拒否しなければならないほど
特殊なことではないが
帰る所がないとしたら
死ぬ以外にないかも知れない
ひとは淋しいから眠るという
街へ帰るという


2013.08.30 Fri l 詩・笑い仏 l コメント (0) トラックバック (0) l top
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